卒業旅行・熊本篇

「故郷は 遠くにありて 想うもの」 と詠われてはいるが,そんなことはお構いなしに 15 年ぶりに春に故郷の熊本に還ることにした.卒業旅行と銘打ったが,M2の今頃は恐らく就職の準備で忙しいだろうから,高校,大学(中退…)と行っていなかった卒業旅行をまとめてM1の春にやることにした.

私は貧乏なので,旅行をするとなれば自動的に青春18切符や夜行快速列車を用いての旅行になる.私は一人旅をしたことが無かったので,これらの切符の取り方すら知らない.だが持つべきものは友達で,MM氏,べ氏,瑞穂氏の端的且つ的確なアドバイスのお陰でこれらの切符を難なく買うことが出来た(誠に多謝!).足代,締めて12520円.

出発日は修士論文用のプログラム作成,論文そのものの作成,家の用事などがあり,旅行に行くぞという気には全くなれない.大阪駅発博多逝きの電車は22:08発なのだが,旅行の準備を始めたのが21:00,難波駅に到着したのが21:40という危うさであった …まぁ実を云えばそれほど焦ってはおらず 「熊本に着けば運動不足になるかもしれない」 ということで,最寄のゲーセンで DDR を一踊りしたわけだが.

結局,大阪に到着したのは出発の10分前.汗だくになりながら(この汗は踊った際に出た汗)列車に乗る.夜行快速列車 「ムーンライト九州」 は春休み期間ということもあり,席はほぼ満席であった.窓際の私の席の隣には会社員風の男性が駅弁を食してらっしゃった.恐らく「電車で駅弁を食べる」ことがしたかったと推測される.その後,男性は鞄からノートパソコン V@io を取り出し Air-H でネットを始められた.何故か時折チラチラとこちらを伺ってくるのだが,それがこちらを警戒しているのか,「どや!」という自慢がしたいのか,会話を求めているのかは分からなかった.仕方が無いので,持ってきた私の大学での指導教官の数学の論文を10篇ほど取り出して読み始めた.この2人が周りからどう見えるかは容易に想像はついたが,旅の恥は何とやらである.気にせず論文を読み耽った.ちなみにこの時,友人からのメールで俳優の古尾谷雅人さんの訃報が入る.岡山にてご冥福を祈った.

そうこうしているうちに寝る時間になったのだが,とにかく寝心地が悪い.椅子があまり後ろにリクライニングしないのは仕方が無いとして,電車は揺れるわ,10分間隔で「ドーン」という衝撃音が走るわ,右斜め前方の漢のいびきが響くわで全く眠りにつけない.しかし横の男性を見るとスヤスヤ寝ており,その横の女性は大き目のフードをスッポリ被って虚無僧のようになってちゃんと寝ているので私だけ文句を言うわけにもいかないので,黙って目だけ瞑っておいた. そうこうしているうちに5:00になり,空が徐々に白いでくる.すると,横の男性がこちらを一瞥し,寝返りを打って尻を向け,やにわ放屁したからたまらない. 寝ているどころではなく,結局ほとんど睡眠時間を取ることは出来なかった.

朝,虚無僧のように寝ていた福井県出身の女子大生が香川県出身のおっさんに,博多に着くまで延々と旅行について語られていたのが面白かった.年の差のせいで話があまり噛み合っていない感じが非常に面白い.自分の桜の話は延々と語るくせに,女子大生の中国語を習いに留学するという話は刹那のタイミングで「あ,そうなの」と切るおっさんのトーク回しや,「福井県は100万人都市ですか?」というおじさんの振りに「分かりません」と返す女子大生の純朴な返答など,突っ込みどころは満載であった.

ろくに寝れずに博多に到着した.前述の漫談に対して心の中で逐一ダメ出しをしていたのだが,ちょうど KIOSK で話し方研究所々長さんが書いたトーク回しの HOW TO 本があったので読むことにした.話下手で滑舌が悪いので,会話技術に対しては常にストイックでありたいと思っている私にとって,車中の女子大生とおっさんは自分のトークを見直す良いきっかけを与えてくれたことになった.感謝,感謝.旅行中の「わしの掲示板」でカキコした 『礼儀とは嫌いな人間に自分から挨拶をすることである』 はこの本から拾ったものである.内容も納得のいくものばかりで,非常にいい本に出会えて良かったと思っている.

立ち読みだけど.

 

博多からさらに3時間,列車に揺られて熊本に着いた.小渕元首相が「平成」と書かれた額を 掲げた記念に作られたという「へいせい」駅があった.が,これはどうなのだろう?

15年ぶりに我が家に到着.跡形も無く,綺麗にキリスト教の教会になっていた.写真はあるのだが,「@@教会」とはっきりした文字で書かれており,ネタ的にも面白みの無いものなのでここには載せないことにした. 代わりというわけではないが,以下に私の町の画像を4枚ほど紹介.

町のメインストリート.
4階以上の建物はありません.

メインストリートから1筋離れてみました.
あまりにも人が居なさ過ぎです.この時期,
道路に蜃気楼が出てました.

 

メインストリートから2筋離れてみました.

左の画像の視点を90度右に向けると….
ちょっと油断すると田畑が顔を出します.

 

15年来,帰郷することに憧れ続けた熊本だが,到着してから3時間で飽きてしまった.ここらでネタ探しに奔走することにした.以下に私の町の画像をさらに4枚ほど紹介.

メインストリートから100m弱離れた地点.
私の子供の頃から道路しかありませんでした.

左の地点からそう遠くないところ.
「とりあえず道路を作ってみました」
という感が大好き.もちろん人は….

 

やはり人はいません.

そんなところに選挙事務所がポツンと.
「俺は金満政治家ではないそ」という主張か
否かは別にして,コスト削減し過ぎです.

この後ひたすら歩き続けたのだが,足の疲労は増したがネタは増えなかった.ということで2日いるつもりであった熊本から早々に立ち去ることにした(左のバスの時刻表は前述の事務所の前にあったもの).

15年経った故郷を見てきたわけだが,半分ほどは子供の頃のままであった.安心にも似た感情が込み上げる反面,変わってしまった風景を見ると多少寂しくなったりする.うちの町を走る車だけが異様にのんびりと走るのを見て,「町を開発せずにこのままのんびりとした町のままでいいじゃないか」などと無責任なことは云えないが,昔とあまり変わってくれない方がいいなぁとは思った.

 

夜は(本格的なものは高いので)場末の定食屋で馬刺し定食を食べ,熊本駅周辺で一番安いであろうビジネスホテルに泊まった.足は引きずって歩かなければならないほど疲弊しきっていたので湿布薬を10枚ほど張って就寝.翌朝はその臭いで目覚める.前日で町を5つ6つほど歩き切ったのでもう熊本は腹一杯.そこで博多に行き,帰郷旅行をラーメン旅行に変更することにした.

 


 

卒業旅行・博多ラーメン篇

昼過ぎに博多に到着.大阪梅田にあるのと同じようなヨドバシカメラが駅前にあった.テレビチューナー付きパソコンが展示されており,「3年B組金八先生2」の再放送をやっていた.大阪で1ヶ月前にやっていたのだが,金八先生は各テレビ局からひっぱりだこのようである.

とりあえず KYUSYU WALKER を見て調べ,まずラーメン屋「一蘭」に行くことにした. KYUSYU WALKER の博多とんこつラーメンランキング1位の店である.

元会員制の店だったらしいです.

入ると席を指定されます.
私は「ろ」の10番でした.

席は全てついたてで区切り.
ラーメンに集中しろと・・・.


席はこんな感じです.
左に水の蛇口があります.

実物とは多少違いますが,
席に着くと味の指定をする
用紙を渡されます.

席の後ろは何故かティッシュの山が・・・.


肝心のラーメンです.
私はこってり味で固めの
細めんで食べました.

替え玉をするときは席の前の
金属板にプレートを置きます.
すると店内にチャルメラが鳴り,
替え玉が出てきます.

店員側からのアングルです.
なかなかの閉鎖空間です.

ランキング2位は「一風堂」で大阪・梅田と同じ味だということで行くのはやめた.夜は温泉に入り,温泉の近くの居酒屋で地鶏の刺身に酒を頂いた.酒といってもカシスオレンジなので周りから見ればかなり滑稽に見えたことだろう.まぁカシスオレンジが好きなのだから仕方が無い.その後ビジネスホテルに宿泊.やはり5000円也.

翌日,博多のキャナルシティなる歓楽施設にあるラーメン・スタジアム内の「大砲ラーメン」に行った.某雑誌の博多とんこつラーメンランキング3位の店である.

スタジアムの看板です.
全国のラーメン名店が
期間ごとに入れ替わり
立ち替わり集まっています.

大砲ラーメンの看板です.
メニューは大きく分けて
「ラーメン」と「昔ラーメン」
があります.

昔ながらのとんこつラーメン.
その中のカリカリ背油が尋常でない
旨みを出しています.

そうこうしているうちに帰りの電車の時間になった.母親の同僚に渡す土産を頼まれていたので,いわゆる名店街に明太子を買いに行った.関西とは違うと感じたのが,どこの店が安いのかを調べる為にウロウロしたらあからさまに嫌な顔をされる点.店員(概しておばちゃん)の口撃の凄まじいのが,店毎の値段のメモを取りだした途端にピタリと止む程であった.まして「消費税分だけでもまけて…」等と云った日にゃ罵倒にも似た言葉のサービスが返ってくる.

「あ〜んた,店の前をウロウロ〜,ウロウロ〜,しよってからに,ウロウロしよるかと思ったら今度はまけてとか云いよるかぁ!」

まぁ気にせず関西人のアイデンティティを振りまいてきた訳だが,「まける」という文化が関西特有のものであると改めて感じた出来事でもあった.

頼まれた土産を買い込んで夜行快速列車に乗ると,隣の席は女の子であった.放屁される心配が無くなって安心していると女の子が話しかけてきた.話すと出身は福井県らしい.さらに話すと行きの列車でおっさんに語られていた女子大生であった.珍しいこともあるもんだ.聞くと,普段はほぼ全日バイトをしており,かつこの4月で3回生なのに取得しなければいけない単位は残り10単位という頑張りぶり,そして自力で中国の大学から願書を取り寄せ,夏休みに1ヶ月ほど語学習得すべく中国に滞在するというやる気満々ぶりには感服させられた.顔も性格も良く,しかも非常に聞き上手であったので,私の中の福井県の株が天井知らずで上がった.旅行の締めとしては文句の無いものであった.終わりよければ全て良し.

 

オチですか?ありませんが何か?

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